「縁」に就いて(5) 金子智一、佐藤嘉尚

★前回の中山正男の記事で、中山氏の義弟という事で、少しだけ触れた金子智一氏に付いては、伝記本があるので、その事跡を詳細に知ることが出来る。
2003年末に平凡社から出版された、
「歩々清風、金子智一伝」(佐藤嘉尚著)、である。

これを読むと、この人の、と言うか、(或いは、往年の日本男児の、と言うべきか)、の生き様に感動する。
20世紀後半の高度成長期の頃から、「金が全て」、になった社会しか知らずに成長した、現在の若者達に、一読を薦めたい本である。

金子は、この人の存在が無かったならば、インドネシア独立も無かったかも知れないほどの人で、インドネシアの最高功労勲章、「ナラリア勲章」、を授与されている。

それなのに、日本では勲四等旭日小授章の扱いである。
勲四等というのは、私の周囲を見ると、碌な仕事もしてない、給料泥棒みたいな官僚等、が多く貰っているもので、官尊民卑のわが国章典制度の悪弊が、此処にも顔を出している。
尤も、日本では、どの様な人が叙勲を受けるのかは
  ▲:「人間の評価」に就いて(4)春の叙勲[B-39]
  ▲:「人間の評価」に就いて(3): [B-30]
に書いた通りであり、今更、改めて言うまでもないことである。


この本の中に、インドネシアの有力者である、スカルノ、ハッタ、マリック(元国連議長)、等の名前の出てくるのは当然だが、
石原莞爾、尾崎士郎、大宅荘一、倉田百三、小池百合子、八田一朗、橋田寿賀子、中山正男、下中弥三郎、林芙美子、吉川英治、横山隆一、
などの、新旧時代の思い掛けない名前が随所に出てくるので、思わず興奮し、20世紀、特に前半には、どの分野の人も、活き活きと生きていたなあ、と感じる。


金子智一は、仕事人間であったが、収入をあまり家に入れない亭主だったから、家計は妻、「きみ」氏が、夫の代わりに、農業で生計を支えた。
 「きみ」夫人は農業のプロを自認し、独りで家計を支えた程の働き手である一方で、歌集、エッセイ集、小説などの出版物も多く、それも、伊藤整、大宅荘一、佐多稲子などに評価されたり、平林たい子文学賞を受賞したりの、本格的なものであった。

Y君の母も和歌を詠んでいて、新聞歌壇選者の若山牧水に上京を勧められながら、田舎に沈潜し、子供たちを育て上げた事、を承知している。
明治・大正の女性には、こういう人達が居たのだ、と感動する。


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★前回の記事に、中山正男の作り出した「世界青年の船」に、R君の娘さんが2度も乗船したとの、ご縁(?)を紹介した。

我々仲間と金子氏とは、更に深いご縁がある。

★智一氏の御長男・雅昭氏が、Y君の大学研究室で、卒業論文を書いたのである。
大学紛争で、日本の大学の性格は全く様変わりしたが、それ以前の雅昭氏の頃には、教授と学生の間の人間関係には、往年の大学の良さが、残っていた。
Y君は雅昭氏にマラソンに行きましょう、と引っ張り出されたり、という事のあった時代であった。

★雅昭氏が卒業し、就職して未だあまり日時も経たない頃に、ブラジルに転勤するというので、羽田まで見送りに行ってご両親に会ったのが、
Y君と金子智一御夫妻の初対面であった。

現在と違って海外への旅行も、派遣もかなり珍しかった時代である。
その時にY君の心配したのは、適齢寸前に独身で、その様な外国に派遣された雅昭氏が、日本の女性の伴侶を選ぶ機会、を持てないのではないか、という事。
何時帰国出来るか分らないブラジルへの出発の前に、何かその対策を相談しよう、という気持で羽田に行くと、本人も、ご両親も全く平然としていて、日本国内での転勤の見送りのような感じなので、Y君は呆れてしまった。

あれだけの大人物の一家だから、彼のようなチマチマした事に神経を使うということが無いのは当然だが、当時の世相の中で、Y君には、何とも理解し難い出来事であった、という。


★その後、Y君の研究が、地球環境問題への対策として、有望であることが、新聞で大層派手に報道された一幕があった。

最近でこそ、地球環境問題は全世界で明瞭に意識され、日本でも大きく取扱われるようになっているが、当時の社会一般では、随分と冷淡であった

 {例えば:★フロンガス規制と今後 [C-54]参照}

ただ、一部の良識ある人々はその頃でも、真剣にこの問題を心配してをり、Y君の研究が新聞で報道された時に、全国の善意の市民の方々から、多額な研究費の援助の申し出があった。
例えば、ある杉並区の老女は、自分の所有する土地1200坪の寄付、を申し出た
、ほどである。
Y君は、彼なりの論理と信念を持つが故に、これ等の善意の申し出を全て辞退し、ただの一円の寄付も受けなかった。

★その時に日本全国で、研究費援助を申し出た人達の多くは、世界連邦運動の関係者であった。
  ということは、金子人脈に繋がった人々
であった。

だが、当時それを承知していなかったY君は、これ等の用件で来訪する人達と世界連邦運動の話に触れても、湯川すみ氏の話をする事は有っても、金子氏、中山氏の話をすることはなく、雅昭氏の話など、尚の事、することは無かった。


Y君が金子智一御夫妻の事跡を知ったのは、遥か後のことである。
雅昭氏が海外赴任する時の、ご両親の態度に納得が行ったのも、
日本全国の善意の人達の思想的背景に金子氏の影響の伏在した事を承知したのも、
遥かに後になって、上記の伝記書、「歩々清風、金子智一伝」(佐藤嘉尚著)、を読んだからである。  迂闊と言えば、迂闊な話である。

結局、Y君は金子智一氏とは、雅昭氏の縁と、研究費関係の人物の縁と、二重にご縁があり、ご本人とも直接に会って居ながら、気が付いていなかった。
前回の記事の中山正男氏、(金子智一氏の義兄)、のご縁を含めれば、
 何重の縁が有ったことになるのだろう

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★上記の、Y君の研究へ援助を申し出て、来訪された人達は、勿論、夫々可也の社会的・経済的な力量の持ち主だ、ということはお分かりだと思う。
が、中でも、戦前の昭和史に有名な某事件に絡んだ、我々からすれば、神代の人物、が居られた。
キャズ君が、いずれその内に彼のブログの、「仲間の出合った人達」シリーズ、に取上げるであろうと思うので、此処では敢えて触れない。 {後注;▲わが青春に悔あり :[C-168][2008/5/11] }。

それ程ではないが、更に付け加えると、上の本の著者の、
佐藤嘉尚氏も、有名な、「四畳半襖の下張り」事件、の主役として一時期、日本中のマスコミの話題の主人公となった人物
であることを、ある年代の方は、よく承知していると思う。
近頃で喩えれば、ホリエモン以上の、時の話題の中心人物であるが、Y君は別世界の出来事と思っていた。
思いがけず、上記の著書の関係で、メール接触の機会が生じるなどした。

人の世のご縁とは、不思議なものである。

仲間の出合った人、ご縁のあった人の関係記事のリストは、キャズ君が纏めてくれている: → → 仲間の出合った人達:(参考資料)

この記事へのコメント

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2006年10月05日 17:42
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2006年10月30日 15:10
最近の高校で、必修科目を履修せず、なおかつ履修した事にして記述している実例を聞くと、大学受験のための予備校でしかないような現在の高校のあり方を寂しく思う。必修と言う科目が必修に値するものであるか否かは私には判らないが、教育制度のあり方自体にメスを入れなければこのような事柄は今後も続くのではないか。
Y氏と雅昭氏とのような資質と、師弟関係をもう一度、再構築するような人間教育の場を教育システムの中に組み入れて行く必要性を痛感する。

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