伝統文化と常識の変遷(5a) 力武常次

1923年9月1日の午前11 時58分44秒に、伊豆大島、相模湾を震源として直下型の大地震、関東大震災が発生した。
84年目の今朝、只今新聞を取ってきてざっと目を通したが、関東大震災の文字は見当たらなかった。
落ち着いて見直せば、何処かに在るのかもしれない。 或いは我が家で取っているM新聞が、特別に程度が悪いのかもしれない。
或いは、新聞であって「旧聞」でない、との主張かもしれないが、M新聞を只今二度見直した限りでは、関東大震災の文字はない。
但し防災グッズの広告はある。

 ★  ★ ★

○「昭和の厳しい思い出」、に関わった人物を話題として、ピアニスト君と、キャズ君が
  ▲久間事件・(9)・海外の反応[A-61]
  ▲終戦62年と柳澤恭雄氏の死[A-62]
  ▲ 「成果主義」について[C-152]
を書いている。
それを見て、私も一つ書くことにする。
原爆(評価)、終戦(柳澤)、技術開発(野間口)、の次に、地震、大学紛争の関連(力武)の話題がくれば、後は、バブルの話を追加すれば、昭和の荒筋が見えることになる。

終戦後半世紀を過ぎた、今から3年前の8月、2004/8/22に、力武常次氏が亡くなった。
力武氏といえば、地震予知と大学紛争である。

力武氏は地震予知に確率論を持ち込む着想を1970年代には学術論文の形で提唱した。
一般書として1988に書いた『日本の危険地帯』には、各地で近く震度6以上の地震が起きる確率を示しており、その中で、神戸の確率29%は、全国62都市で3番目に高い数字であった。

当時の世間一般では、神戸には地震は無いというのが常識であったので、この警告は無視されて、95年の阪神大震災の大被害を生じた。

大学紛争が最も激しかったのは東大であり、その東大で最も激しかったのが、東大地震研であった。
力武氏は、その時期1970/12に、地震研の所長に就任した。
大學を守るために機動隊を導入する事、を積極的に提唱した力武氏の判断は、
現在の人間には「常識以前」、であろうが、当時は「常識外」、であって、厳しい批判に曝され、責任を取る形で所長を辞め、米国コロラド大學に逃避したりした。



 ★  ★ ★ 大學紛争について  ★ ★ ★

養老氏が未だに、青春時代の娯楽に大学紛争を愉しんだ連中、を許さない、気持ちが良く理解出来る。 と言うよりも私も全く同感である。

今から二年前[2005/07/18]、にピアニスト君が書いた記事、 歴史認識(2)
、にY君の大學の紛争の話がある。

『大学紛争の最中に、Y君の大学は、教授会構成員に学生を加えようとした。
教授会で、殆ど全ての教授が沈黙して決まりそうになった時に、反対の発言をして、その決定を阻止したのは、本来教授会では発言権の無い庶務課長O氏と、O教授であった。
その後、紛争学生におもねっていた学長が逃げ出したので、O教授は学長代行になり、機動隊を導入して、紛争を収めた。
この御蔭で教授会規則は、無傷のまま保護された。
そのことのために、紛争が収まり、日本社会が落ち着きを取り戻した時に、大學は救われた。

しかし、O教授の御蔭で平和を取り戻した大学内で、O教授が機動隊を導入した事実への批判は残った。
それをしなかった場合にどうするか、の智恵を持ち合わせない教授達が、そのことだけを非難した。


最大の危機の時に会議で沈黙を守り、機動隊導入を非難した教授達は定年を迎えると名誉教授の称号を贈られた。
が、大學では、安売りするようになった名誉教授称号を、O教授には贈っていない。』
ことが書いている。


名誉教授の称号に絡んでキャズ君が、あるブログにコメントをしていた:
『文学賞に限らず、ノーベル賞の評価が次第に危うくなってきたのは事実です。
立派な賞だから、貰った人が偉い、のでなく、立派な人達が貰うから、素晴らしい賞になる。
その点で、わが国の国民栄誉賞も危ういもので、2度辞退したイチローが、素晴らしく偉く見えます』 
 キャズ君は、国の内外で何人かの、ノーベル賞の受賞者たちの事情を、些か具体的に知っている。
受賞者の仲間たちの打ち明け話、をモロに書かないようにしながら、のコメントであった。

大学紛争が最も激しかったのは東大、その東大で最も激しかったのが東大地震研であった。
地震研の所長であった力武氏が、大學を守るために機動隊を導入する事を提唱した判断は、現在の人間には「常識以前」、であろうが、当時は「常識外」、であって、厳しい批判に曝され、責任を取る形で所長を辞めた、と書いても、現代の人には理解出来ないだろう。
そこで、他の大学として、Y君の大學の例を紹介した。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 伝統文化と常識の変遷(5b) 常識の慣性

    Excerpt: ▲伝統文化と常識の変遷(5a) 力武常次 、に続く: Weblog: 佐久間象川 racked: 2007-09-01 19:05
  • 文化と常識の変遷(5c) マスコミと日本滅亡

    Excerpt: ◎伝統文化と常識の変遷(5a) 力武常次 、に続く: Weblog: 佐久間象川 racked: 2007-09-02 05:57
  • 瀬島龍三「幾山河」

    Excerpt: ▲瀬島龍三氏の回想録を読む気になった理由は、第一に瀬島氏が先日亡くなられたこと、Alps氏の記事に感銘を受けた事の他に、もう一つ、書名が「幾山河」であったためである。   書物の内容に付いては、Alp.. Weblog: 二人のピアニストに思う racked: 2007-10-04 04:31
  • センター試験と老人の感慨

    Excerpt: 昨日から大学入試センター試験が始まり、新聞、テレビでは受験生の数とか、当日の各地の天候の模様とか、マスクを掛けた受験者の表情とかが報道されている。 しかし、この制度が我が国の社会にとって、どのような.. Weblog: 佐久間象川 racked: 2010-01-17 10:20
  • 日本人と先見性

    Excerpt: ユダヤ人救済への貢献が世界で評価された唯一の日本人   である杉原千畝を、日本はどのように処遇したかを      ▲日本の国際化と杉原氏:[B-157 ]、 に書いた。 地震予知に確率論を持ち込.. Weblog: 佐久間象川 racked: 2011-08-07 05:01
  • 地震関連ブログ記事のリスト

    Excerpt: 今回の地震・津波・原発、に関連する内容の、   友人たちのブログ記事を、公開日付順に並べた   リストを作った。 後日の参照の便宜のためである。 Weblog: 変人キャズ racked: 2011-08-07 05:45
  • 原発文化人50人斬り

    Excerpt: 「原発文化人50人斬り」(佐高信著、毎日新聞社刊)              という本を読んだ。 3.11以来急速に変化した世論の中で、 その前日までの自身の原発評価の発言には頬かむりして  .. Weblog: 佐久間象川 racked: 2011-10-02 12:13