センター試験と老人の感慨

昨日から大学入試センター試験が始まり、新聞、テレビでは受験生の数とか、当日の各地の天候の模様とか、マスクを掛けた受験者の表情とかが報道されている。
しかし、この制度が我が国の社会にとって、どのような意味を持つかの吟味などの論究は見当たらない。
     ★ ★ ★

時代の常識、(その時代に社会を構成している人間の常識)、
   というものは、 別の時代の人には、
         全く理解し難いものであることがある。
 我々の仲間のK君が市民館の社交ダンス・パーテイでぶっ魂消た話
 を聞いて、時代の変化とは、その様なものかと思って、改めて驚いた。 
  K君は踊りながら相手の若い女性に昔話をしようと思って、
  「日本が米国と戦争しているときに・・・」、と話し始めたところ、
  彼女に、「へー。 日本が米国と戦争したことがあるの?
    それで、どちらが勝ったの?」、と言われて、
         腰を抜かしかけた、 という。
 帰宅してインターネットで調べて見ると、現在の日本人全体の中で、
   日米が闘ったことを知らない人間が38%だというから、
    それを知らない人間と出会うのは当たり前。
   そのような人が居ることに驚く方が、非常識である。
     ★ ★ ★

同様に、センター試験というものが定着している現在、
  このシステムの存在は当たり前。  その意義に疑問を
  持つ人間が居るなんて、時代の常識では考えられない。
  従って、メデイアの報道も上記のようなものになるのだ。

しかし、半世紀前には全く違っていた。
例えば、キャズ君のブログ、▲[C-12]: 「大学入試に思う」、を見て頂きたい。
  この文章は、ブログとして公開されたのは、5年前の2005/7/7だが、
   実は、1978/3/29に、新聞に掲載されたコラム記事である。
  キャズ君は自称する通りの変人であるが、 その当時の識者の
     多くも大体同意見であったことは、当時の資料を
       見て頂けば、容易に分かる。 

その以前の入試の状況については、大昔の菊池寛の小説があるが、
       現在は入手し難いだろう。
   我々の年代の話の一例は、 (文末引用記事、[A-70])にもふれている。
     ★ ★ ★

入試センター試験は、現在では常識であって、誰も敢えて文句を
       言わないが、嘗てはかなりの論議があった。
   当時は「官」の力が圧倒的に「民」に勝っていたから、
       良識ある民間の意見があっても無視された。

議論があっても、結局のところ、「悪貨が良貨を駆逐」、して
    世間に定着した「常識」は、  他にも幾つも例がある。

     ★ ★ ★

例えば、印鑑の使用は署名に変えるべきだ、という議論が
     戦後の日本では広く主張されていて、
   いずれ10年くらいの後には社会はその様になるのだろうと、
                       多くの人が思っていた。
   しかし、現在でも銀行、郵便局などの窓口で、印鑑の使用は
       当然の常識であり、登録された印鑑と違うなどといって
       ゴタゴタすることはあっても、誰もこの制度そのものに
     疑問を感じたりはしない。 (文末引用記事、[A-95]参照)。
     ★ ★ ★

自動車運転免許も、ドイツやフランスのように、一度取得したら、
     問題を起こさない限り生涯有効にすべきだ、という議論が
    一時期かなり広く行われて、山本七平(ヤンデンマン)氏などは
    随分しつこく粘っていたが、現在では誰も何も言わなくなった。
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しかし、勝ち残った悪貨の方が、「駆逐された」良貨よりも良いもの、
   ではないことも、何時の時代の人間も記憶しておかなければいけない
(文末引用記事、[B-91],[B-62],[B-61], [B-60],[B-59], [B-58],[B-57]参照)

共産主義が猛威を振っても、100年の後の世界では消滅するのは、
       人類には知恵があるからである。
ナチスが昭和初頭のドイツで、日本社会党が戦後日本で猛威を振っても、
       歴史の時間経過の中で支持者が居なくなる。
     ★ ★ ★

大学入試センター制度も、100年後には笑い話になるであろうが、
人類社会の動きのタイムスパンというものは、そのくらいのものである
  (文末引用記事、[A-94],[B-91],[B-47][C-118][C-117]参照)。

悪貨が居座っている時代に生まれてきた者は、不運なのである。   日本という国に、
大正末期から昭和初期にかけて生まれた人間は戦争の犠牲になり、
昭和二桁に生まれた人間は豊かな生活を謳歌できたのは、
     運・不運の問題である。(文末引用記事、[A-80][C-44]参照)
神から与えられた時代と世相の中で生きていく以外にないのは
     人間の宿命であるので、自分では選べない道程であるが、
                            悲しいことである、
  (文末引用記事、[A-81][B-70][C-122][C-121][C-120]参照)

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 ピアニストの、▲[A-106] K.H.さんの書信を拝見して、を見て、Alpsブログの原文を読み、
いささか人生というものを考えさせられて居るところに入試センター試験の報道が目に入ったので、受験に向かう若者の人生の運というものを感じて感想を此処に残す次第である。

なお、新春第一回のエントリーなので、補足を書き添えます。
 ▲[A-80]にピアニスト氏が書いているように、我々老人グループの面々のブログでは、3年ほど前から、頂くコメント、TBの多くを、掲載せずに削除しています。
大変失礼なことと承知していますし、時にはそのことを承知の上、という文面を頂いて恐縮することもあります。
所謂著名ブログとは違って、エントリーの数も少ないし来訪者数も多くはないが、現在も継続的に覗いて頂いている200~300人の固定来訪者の方は、以前の事情を御存じでご理解頂けると思います。 
が、何かの機会に偶然お立ち寄り頂いた方に御不快の思いをさせ、御叱りを頂くことがありますが、悪しからずご了承ください。 決して、ご意見に反発しての削除ではありませんので。

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参考資料

▲[A-95] 署名の話(1)
▲[A-94] 社交ダンスの鎖国は維持
▲[A-81]戦争を知らないわが孫に(2)
▲[A-80]戦争を知らないわが孫に(1)
▲[A-70] 旧制中学入試問題集
   ★ ★ ★ ★ ★
▲[B-91]没落への途
▲[B-70]伝統文化と常識の変遷(6a)
▲[B-62]伝統文化と常識の変遷(5b) 常識の慣性
▲[B-61]伝統文化と常識の変遷(5a) 力武常次
▲[B-60]伝統文化と常識の変遷(4)
▲[B-59]伝統文化と常識の変遷(3)
▲[B-58]伝統文化と常識の変遷(2)
▲[B-57]伝統文化と常識の変遷(1)
▲[B-47] 「浜松からオートバイが姿を消す」を見て
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▲[C-122]:社会的忘却のメカニズム(3)
▲[C-121]:社会的忘却のメカニズム(2)
▲[C-120]:社会的忘却のメカニズム(1)
▲[C-118]大学入試センタ-試験(2) 
▲[C-117]大学入試センタ-試験(1) 
▲[C-44]「制度改革」

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