福島原発の事故処理

今回の3/11日の東北地方・太平洋沖地震
  の影響による、福島原子力発電所の事故は、
  従来の常識を超えたところで起こっている。
それならば、その対応も、従来の各種前提常識
  を超えた対応、が必要
であろう。

例えば、山道を運転して降りてくる時に、急に
  車のブレーキが利かなくなったとする。
  こうした時には、山側斜面に車の胴体を
  擦りつけて車を停止させなければならない。
  「そんなことをしたら車に傷が付く」、
  なんて言っていてはいけないのである。
  実際上はその前に、ギアダウンしたり、
  エンジンを切ってスピードダウンするのも、
  技術のうちである。

3/11日の地震や津波は、日本では1000年に一度の
  災害であり、原子力発電所の設計時の想定を
  超えたものだったろう。 これは仕方のないことで、
  1000年に一度の対策をしてあっても、
  1万年に一度はそれを超えた事象がおこり得る
  のだから。

問題は、異常事態が発生した時の対応である。
 
     ★ ★ ★ ★ ★

地震・津波で、福島原子力発電所では、原子炉、
  及びタービンが自動停止した。 原子炉内を
  冷却するポンプが海水を被り故障した。
  その後、非常用ディーゼル発電機も故障停止
  したため、冷却水循環系統に異常が発生した。

燃料棒の外部を被覆している金属ジルコニュームは、
  高温になると水と反応して、水素を発生する
  性質がある。
3/12に炉心の水位が低下して、燃料棒の一部が
  水面から露出し高熱になったし、一部の炉心溶融
  も起こった。 大気中への水素ガス放出が起こり、
  水素爆発による建屋の崩落などに発展した。

燃料棒の露出を防止するのが急務だから、
  平常時の給水が出来ない状況では、目の前に
  大量に有る海水をプールに入れて対応するのが、
  大人の常識である。
海水を入れることで原子炉が使い物にならなくなる
  かもしれないが、そんなことを言っている場合
  ではなかった筈。
東電は自主判断で、それをすべきなのに、
  しなかったのは、馬鹿である。  この時に、
  海江田万里経済産業相は東電に指令を指示し
  一号機原子炉を海水で満たすように指示し、
  東電は午後8時20分に着手した。
   海江田氏は立派である。

しかし、若しも私が責任者ならば
  あの日の内に原子炉建屋の天井に穴を明けていた。
  事後の今だから言うのではなく、あの日に
  私はそう考えて周囲の人に言っていた。
  その心は、炉心で発生する水素が建屋の
  上部に蓄積するのは危険だから、
  天井に穴を開けて逃がしてやるのが良い、
  と考えたからである。
結局、次々と建屋は水素爆発で吹っ飛んで、
  惨憺たる焼け跡の姿になった。
  こうなるのと比べれば、少しばかりみっともなくとも、
  建屋屋上に風穴があいている位なら
  立派なものであった。

     ★ ★ ★ ★ ★

私が次に心配なのは、3/17現在行われている、
  3号炉、4号炉などに、地上放水車から水を
  かけるという話である。  燃料棒が水面から
  顔を出している事の対策として、計画されている。

燃料棒の冷却のために給水をしなければならない
  のはその通りだが、強力な放水で燃料棒が
  破損する心配は、無いのだろうか。

天然ウランの主体であるウラン238は、核分裂を
  しないので、原子力発電や原爆に使用する
  ためには、約0.7%の割合で含まれている
  核分裂性の同位元素ウラン235の割合を、
  人工的に高める必要がある。
原子力発電のためには、これを(原爆を作るほど
  の高い濃縮度ではないが)、2%から5%程度の
  濃度にした低濃縮ウランを、燃料として
  利用しなければならない。

この燃料に含まれているエネルギーを、電気の形
  で取出す具体的な技術の形として、原子炉の
  構造には、いろいろなタイプがある。
福島第一原子力発電所は沸騰水型軽水炉を
  使用し、1,2,4,5号機は燃料として
  二酸化ウランを、3号機はMOX燃料
  (プルサーマル)を使用している。
軽水炉だから、軽水が減速剤と冷却剤を
  兼ねている。

この場合、燃料を原子炉に入れるときに、
  核燃料をセラミックに焼き固めた燃料ペレットを
  厚さ2mm、直径1cm強で、長さが約4mの
  きわめて細長い形状のジルコニウム合金製の
  管(燃料被覆管)に封入する。
燃料棒を100~200本束ねて燃料集合体を構成し、
  核分裂制御棒を含んだ構造で、数百個の
  燃料集合体によって炉心が構成される。

この炉心構造で分かるように、機械的衝撃に
  特別に頑丈にすることを配慮・設計してある
  構造体でない

初期の原子炉で使用された燃料被覆管では、
  機械的衝撃力が原因ではないけれど、
  核分裂生成物(FP)の漏出事故が発生した。
  その原因も究明され、原子炉運転の技術で
  対応されて、全世界で安心して
  原子力エネルギーの利用が行われてきた。

     ★ ★ ★ ★ ★

昨日来、福島で行われている原子炉対策を
  テレビ報道で見ていて、私の心配は、
  燃料棒が乱暴な外力で破壊し、
  放射能を持つ燃料が四散することは
  無いのだろうか、ということ。

炉心や、使用済み核燃料保存場などでの
  水不足の対策として放水車で給水する計画
  が進行している模様だが、
  その機械的衝撃で燃料被覆管が破損して
  内容物の核燃料が四散する心配が無いか

  心配である。

現場の担当者の検討した内容に、
  この問題が考慮されていたかどうかが、
  テレビ報道では、全く分からない。
それでなくとも、テレビ報道では、
  専門家と称する人物やアナウンサーの
  あまりに無知や非常識な発言が目に付いて
  腹立たしいので、この辺をキチンと検討
  したかどうか、本当に不安である。 
  例えば、専門家と称する人物の発言で、
  物理量のミリとマイクロの換算も知らない
  のにびっくりしたりもした。

現役を遠ざかり、この心配を担当者に伝える術
  もない隠居の身としては、
  「可能性」がどうであっても、結果が無事に
  終わってくれることを、祈るだけである。

この記事へのコメント

2011年03月18日 21:00
麻生さんに倣えば「みぞうゆう」の惨事ですね
二、三、質問させてください

>あの日の内に原子炉建屋の天井に穴を明けていた
あの日の内なら放射能の心配がなかったんですね

>東電は自主判断で、それをすべきなのに・・・
東電は原子力発電に消極的なのだが政府の指示でやむなく付き合っている、という噂を聞きました。政府から言われた事だけきちんとやりましょう的体質で、指示待ちだったのではないかと

最終的に責任を取るべき人物を特定できますでしょうか
(ヘンな質問ですみません)
佐久間象川
2011年03月18日 23:16
ロング様のように1000日に一度くらい来襲して、落語の素養も不十分な老人には正確な回答の出来ない(ヘンな質問)を残していくコメンターも困りものです。 逆に、ご意見をお聞かせ下さい。
ロング
2011年03月19日 08:30
早速のレスありがとうございます
と言うようなものの、日頃から親交のある仲間じゃないと詳しいお話をして頂けないのはやむを得ない事と理解し、甘えた質問を書いた事をお詫びします
俺ちゃんは意見を持っておりません、ただ、いいことが書いてあると、一所懸命読んで正確に理解したいと思うだけでございます
痩せ蛙
2011年03月20日 04:39
管ちゃんか、枝野に電話して、原発の建屋天井に穴をあけるように言えばよかったのに

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