福島原発の事故処理(続)

前回の記事では、私は前日来行われている原子炉事故対策
  をテレビ報道で見ていて、気が気でなかったことを書いた。
 私の心配は、燃料被覆管の破壊  → → →
   炉心や、使用済み核燃料保存場などの水不足の対策
   として放水車で給水する計画が進行している模様だが、
   放水の機械的衝撃で、燃料被覆管が破損して、
   内容物の、放射能を持つ核燃料が四散しないだろうか、
 ということ、であった。

  現場の担当者の検討した内容に、
  この問題が考慮されていたかどうかは、
  テレビ報道では、 全く分からなかったから。

     ★ ★ ★ ★ ★

その後、水の注入がうまく行って良かった、と思っている。
  前回記事には、若しも私が責任者ならば、
  あの日の内に原子炉建屋の天井に穴を明けていた。
  炉心で発生する水素が建屋の上部に蓄積するのは
  危険だから、爆発する前に天井に穴を開けて
  逃がしてやるのが良い、と考えたから、とも書いた。

でも現在になって考えると、現実に生じた流れの方が
  良かったのかもしれない。 建屋があのような
  壊れ方をしたお蔭で、消防車からの注水が
  ピンポイントで注入先を決められず、噴霧に近い
  状態で、建物の中に水が入っていくのは
  好ましい姿だった。 そのようにして建屋に入った水が
  床面を流れて水槽に入るのならば、燃料棒に
  掛かる機械的な衝撃力は、殆ど生じないから。

人生には、この様なことがよく起こる。
  入試に失敗して卒業年次が遅くなったお陰で、
  社会人になる時点での世相が好適になり、
  人生が幸せに過ごせた人がいる。
  頑健で小学校入学以来皆勤で過ごしたY君が
  海軍兵学校の身体検査の日に発熱して不合格に
  なったのも、後から見れば
  滅多に有り得ない僥倖に恵まれた、と言える。

危険だから水素を逃がしてやろう、などと
  気の利く人間がいなかったのが、僥倖だった。

     ★ ★ ★ ★ ★

現役を遠ざかり、この心配を担当者に伝える術もない
隠居の身としては、「可能性」がどうであっても、
 結果が無事に終わってくれることを祈るだけである。
とは言うものの、原則的には、我々は今の時点での
 最も合理的・理性的対応をして道を選ばねばならない。

社会全体がパニック状態で、いろいろと奇妙なこと
  が起こっている。  私の意見では、
  政治と司法関係がもう少し、しっかりしていれば
  事態はまだ救われるのだが、戦後日本の社会で、
  今更それを言っても始まらない。
 
例えば、原発の故障が報じられた日に、菅首相
  津波被災地や原発の上空を自衛隊ヘリに乗って
  視察に行った、なんてのは、言語道断である。
危機管理の基本常識としては、
  最高指導者は、首相官邸を一歩も出ずに、
  現実問題の処理に、専念すべきである。
  現地での具体的問題の一つ一つに、
  指令を出す、のを最優先すべきだったろう。

同様に、テレビ局も、バカな評論家、芸人、の
  おしゃべりを画面に出すよりも、現地の状況や
  問題点を正確に伝えることに、時間を割り振る
  べきだったろう。
 前回の記事に書いたように、テレビ報道では、
  専門家と称する人物やアナウンサーの
  あまりに無知や非常識な発言、が目に付くのは、
  これも好ましいことでない。

メデイアは、それでなくても昔に比べて質の低下が
  問題であるのに、地震、津波、放射能の平素は
  不慣れな三つの災害に、同時対応をしなければ
  ならぬことになり、洵に酷い状況である。
 
東北地方・太平洋沖地震に伴って、歴史的な津波が
  襲来し、福島第一発電所の事故が発生し、
  生活の破砕された被災地に向けて送るために
  用意している車から、燃料のドラム缶を数本
  盗んだ奴がいる。
こうした時に、中国ならば、犯人をひっ捕えた時に、
  公園で群衆の目の前で、公開処刑で死刑
  にするだろう。
  人権がどうとか言っている場合ではない。
  この公開処刑で悪いことを企む人間がビビる
  ことによって、被災地に数万人の命が救われるのだ。
  日本の法務当事者には、このような感覚が全くない。
 
しかし一方で、自衛隊、消防関係者、善意の民間人、
  地方の行政当局者、などは本当に身命を
  投げ出して働いている。
  菅総理が作業衣を着て「死ぬ覚悟で」と言う姿
  は空しいが、原子力発電所に放水した消防署員、
  自衛隊員は、本当に命がけだった。

     ★ ★ ★ ★ ★

例によってNHKだったと思うが、専門家と称する
  人物が、放射線強度が距離の二乗に反比例
  して減衰する、と言っていた。 我々の時代
  ならば、中学生でも、三次元空間だから、
  距離の3乗に反比例することを、知っていた。
  {但し、発電所から数kmを超える距離になると、
    線源の議論が必要で、話は複雑になる}

また1ミリシーベルトは100マイクロシーベルトだ
  と言っていたが、これも昔なら中学生でも
  滅多に居ない、程度の悪さ、である。
  専門家がそうだから、アナウンサーや評論家が
  物理量の概念や換算関係にめちゃくちゃ
  なのはどうしようもない。
  鳥越なんて偉そうな顔をしている男が、
  放射能強度「シーベルト/毎時」、と、積算線量
  「シーベルト」の、次元の違いに気付かず、
  数値の大小を問題にしているのを見て、
  メデイアの程度の悪さに、本当に嫌になった。

こんなことを、例の仲間が集まって話しているうちに、
  誰かがブログに放射線関係の物理量の解説
  書け、ということになって、ピアニスト君が籤に当った。
    →
 ▲ 放射線関係の物理量単位:[A-129]:[2011/3/21]

(昔、使用されていた)物理量の単位を解説させ
  られることになったピアニスト君は、
  「生き永らえて恥多し。 現役を退いて20年
  にもなるのに、今更旧い知識をこんな形で
  披露させられとは、思わなかった」、と
  貧亡くじを引いたことに、愚痴を言っているが、
  仕方ないだろう。

この解説を見て分かる通り、国の安全基準の
  1ミリシーベルト100倍を浴びても、毎日煙草を
  吸うよりも遥かに危険は少ない。 それなのに、
  その1000分の一のマイクロシーベルトの桁の
  数字を細かに報道し、深刻そうな顔をして
  議論するテレビ人種の不勉強さというか、
  理系センスの欠如が、現在の我が国の
  最大の危険因子
、だとさえ思われる。

     ★ ★ ★ ★ ★

地震学の権威である神戸大の石橋克彦氏は、
  今回と同様な事故の発生を危惧して、
  97年から警告を鳴らし続けたが、社会からは
  無視されていた。
  3/29日に毎日新聞「発信箱」に福岡賢正記者が、
  このことを書き、14年前に、石橋氏が雑誌に
  載せた論文を引用して、紹介している。
  そして、石橋氏の訴えが活かされなかったのは、
  「メデイアや政治家がくみしなかっただけだ」、
  と自省の言葉を述べている。 このことだけでも
  メデイアとしては珍しい、良心的なケースである。

 
ギリシャでもローマでも、没落の時代に生まれ合わせた
  人達が、どんな思いで人生を生きたかを、
  経験できるのだと、ピアニスト君には諦めて貰おう。

この記事へのコメント

雄三
2011年04月06日 02:05
次元の違い。 40キロの速度と、40キロの距離、とは違うということ、ですね。 それを理解できないというので、鳥越一人の名前を出したのは可哀そうです。 アナウンサーだって、新聞記者だって、殆ど皆同じなのだから、鳥越一人の罪ではないのです。 鳥越だって、小沢を支持したり、いいこともやっているのだから。

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