福島原発の事故処理(3)

長らく週刊誌を読む習慣が無くなっていたのだが、
  久しぶりに、週刊文春4/7号を見て、嬉しくなった。
  テレビ、新聞を見ていて、アナウンサー、記者の
  無知・不勉強に腹を立てていたが、この週刊誌
  には未だ、往年のジャーナリストの精神が活きていた。
但し、その姿勢は評価するが、記事の主張には
  賛成できない部分があるので、此処に書き残す。

127頁の「「暫定規制値」の話(池上彰)で、
  理科系と文科系の、発想の差を述べておる。

理科系の発想では、この世に絶対なんてものはない。
  危険性の確率は決してゼロではない、ということを
  前提に置いて話を進める。
  ところが文科系の発想だと、「安全なのか、
  危険なのか、どっちだ」、となる。 理科系の人が
  「100%安全とは言い切れません」、と言えば、
  「ほれ見ろ、安全ではないんだ」、 となる。』

此処までは全く正しい。 そして、このことが
     現在の三重苦国難の根源、にある。
  ところが、この筆者は続いて、
『理科系の専門家は、文科系の素人が心配することを、
  なかなか理解できない。 その結果、素人が
  理解するのが難しい用語と論理を使って
  安全性を説明しようとして、却って文科系の
  不安を増長させてしまうことがある。
政府は理科系の専門家のアドバイスを受けたうえで、
  それを文科系の人が理解し、安心するような
  表現に翻訳することが必要』
  と書いている。
此処に、二つの問題点、がある。

●その第一は、『理科系の専門家は
    と決めつけられては困ることだ。
  確かに、昔の理系人間に比べて、
    現在の理系は質が悪くなっているが、
  それは『理科系』ということの本質ではない

理科系の社会人の平均生涯収入が、文科系に
  比べて1000万円ほど低い社会を作った日本では、
  若者の理科系離れが生じて、優秀な人材が
  理科系に行かなくなった事の結果である。

現在の理系人間は、相手が理解できるように
  話を組み立てて表現を調整するだけの力量が
  無くなっているのだ。
  昔よく言われたことだが、微積分を理解するには
  IQ120の資質が必要であり、IQ130の資質が
  無ければ、推計を理解することは出来ない。
  → →▲ 感度の有無(5)交通警官:[C-131]
     に書いてあるとおり、である。

テレビで見ていて歯がゆいのは、
  原子力の専門家と称する人間が出てきても、
  IQが低くて理解力がないことが明かなアナウンサー
     を相手に、詳細な専門用語での話を始める。
  相手の理解力に合わせて話をすることが
     出来ないのは、 自身が矢張り無能。
  寺田寅彦まで遡らなくても、戦前の理系人間ならば
  こういうことは無かったのに、と思わずにいられない。

●も一つの問題点は、明治以来の日本で法科万能で
  きたツケである。 社会的に法科が優遇されて
  いるうちに、文系人間は理系よりも優れている
  のだという思い上がりを、育ててしまった。

  そのために、文系は最初から理系の話を理解しよう
  と努力せずに、「俺より劣っている奴の言うこと
       なんか、聞いていられるか」、
  という下地が染みついている。 → →
     ▲ 理系内閣誕生の意義:[C-188]
     ▲ 「大学と社会」:[C-35]

●文春に書いているように、「政府の文系人間が
  理系の専門家の説明を大衆向きに翻訳する」
  のでなく、
  「理系人間が最初から、大衆に分かり易い話
       をして、それを政府が民間に伝達」、
    するのが、本筋である。
  文春記事のように、「理系専門家の話を、文系の
  政府官僚が翻訳する」、のは、歪みを生じるので
  好ましくない。

そうはいっても、週刊文春には、
   「首相は、何故座視しているのか
   「自衛隊、消防隊に非情すぎる仕打ち
  などの記事を載せているのは、当然とはいえ、
  嬉しい。
  本来、テレビや新聞が最初から取上げるべき
  内容なのに
、3週間経った今でも口をつぐんで
  いるのだから。

この記事へのコメント

Mariko
2011年04月10日 17:04
私の私鉄駅の周囲には大きな書店が3件あるのですが、昨日の土曜日の朝にはそのどこにも週刊文春がありませんでした。 週刊文春と新潮は毎週木曜日に発売になり、次週の火曜日くらいまでは置いてあるのですが、びっくりしました。 週刊新潮は店頭にうず高く積みあがっているのですが、文春は売り切れたのだそうです。 ちょうど其処を通りかかった小父さんが”先週の記事が良かったので昨日のうちに、みんなが買って売り切れたのだよ”と言いました。 佐久間様と同じ感想を、一般庶民が強く持っていることの結果なのでしょうが、政治家やテレビ局は、それが分かっていないのでしょうか。

この記事へのトラックバック

  • 巨大地震と第3の維新(3)

    Excerpt: 今回の国難で、原発に関る最初のつまずきは、   隠居老人の佐久間氏でさえ考え付く対策、そして   政府内部でも12日早朝に着想のあった方策を   実施できずに、半日の時間を空費して   水素爆.. Weblog: 変人キャズ racked: 2011-04-06 18:03
  • 地震関連ブログ記事のリスト

    Excerpt: 今回の地震・津波・原発、に関連する内容の、   友人たちのブログ記事を、公開日付順に並べた   リストを作った。 後日の参照の便宜のためである。 Weblog: 変人キャズ racked: 2011-04-08 12:10
  • 放射線関係の物理量単位(続)

    Excerpt: 食品に定めた暫定基準値が、野菜、穀類、肉類については数百Bq(ベクレル)/kg、だが、数理的理解や表現が、枝野官房長官には無理だったことが、産地農民の無用な被害を産んで、気の毒な事態を生じた。 我々は.. Weblog: 二人のピアニストに思う racked: 2011-04-18 03:47
  • 再度、“文系と理系”

    Excerpt: ▲ 福島原発の事故処理(3):[B-152] に述べた文系と理系の問題は、私の主観ということでなく、    誰の目にも明らかな型で、表面化してきたのには、    私自身が驚いた。 Weblog: 佐久間象川 racked: 2011-05-26 04:48