原発事故の対応に驚く

福島原発事故への対応の初動の詳細な様子が次第に判明してきた。 政府の事故調査・検証委員会の当事者への聴き取り調査の経過メモが8/16に公表されて、過去の安易な原子力政策のツケが初動の非効率を齎したのが良く分かる。
それと同時に現在でも、”まだ分かっていないのか”と、呆れることが多いのも分かる。 例えば、汚染水を海洋放出したときに近隣諸国、地元自治体、外務省などに事前通告する必要を感じた経産省職員が居なかったこととか、 今でも菅首相は「自分が悪かったと思っていない」こと、 などである。
その中で私が最も驚いたことは、事故から5カ月も経過した今になって、初めて意識された「手抜かり」、のことである。

3月12日の午後3時36分に一号機の水素爆発が起きる前から、東電も政府関係者も、いろいろと対応を考え、処置に動いていたことが、当初から報道されていた。
 「ベント」という言葉も最初から使われていた。  しかし現実は、全ての当事者が考えていたのは、原子炉や格納容器の状態に付いてであって、建屋の事は誰ひとり考えなかった、という。
何の目的で現地に行ったのか分からない、菅直人首相も、考えなかった一人である。

しかし当事者でない、老人の私は、3月12日の午前中から、
建屋の水素爆発は心配で仕方なく、あまりそのことばかり話すものだから、近隣の老人施設でもからかわれたし、
[2011/3/17]に公開したブログ記事:
   ▲福島原子力発電所の事故処理:[B-150]
にも明確に、それが書いてある。

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社会全体の動きの中で、原発の安全性に関する真面目な意見を押し潰して原発推進を行ったことについては、現在しきりに反省の議論が行われている。
確かにそのことは、大きな過ちだったであろう。
しかし、また、人間社会というものは、常にこの手の誤ちを犯し、繰り返すものだということも事実であり、仕方ない面もある。

それに対して、建屋の中に水素が充満して爆発を生じる危険があるので、対応しなければならない、という配慮は、常識的であり、気付くのが当然のことである。
隠居生活に入って20年にもなる私がそれを心配したのに、現業に携わる人達が、誰ひとり、其処に思い至らなかった
現場担当者も、本社の管理部門も、政府の指導者も、である。

このことは、原発事故の問題を離れても、重要な意味を持つと思う。

 
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社会も技術水準も貧困な時代に働いてきた人間と、全てが豊かになった時代に生まれ育った人間とは、基本的な所で感覚が相違する。
私等老人はモノを捨てることが出来なくて、若い人は使用可能なモノを平気で処分する。
蛇口をひねってもお湯が出ないと、若者は不思議がるが、老人は井戸まで行かなくても水が出るだけで有難く感じる。

このような基本的感覚の世代による差が、上記の建屋の水素爆発に思い至るかどうかの違い、の根底にある。
この種の事を、いろいろな場面で私は感じ、日本の将来への不安を感じてならない。

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企業が海外に流出する、とか、素材産業はアジア諸国に移転しても、豊かな社会で生まれ育ってきた現役世代の人達は何とも思っていない。
資源が無く、モノ作りの企業が流出しても、海外の指導をすることで、我が国は成り立っていく、と思っている。
実はかなり前から、出来の良い人材の理系離れは定着していて、今後の海外企業の指導を日本人が出来るなんて期待できない、と私は心配である。

福島原発事故の時に、建屋の水素爆発を心配した人が誰ひとりいなかったことに、5カ月後の今、初めて気付く、という有様を見て、私は本当に心配である。

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