佐久間象川

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 性悪説論者の弁(2)

<<   作成日時 : 2006/01/07 07:22   >>

トラックバック 6 / コメント 2

性悪説論者の弁(2)
★先ず、一つの歴史的事実の話から出発する。
養老孟司氏やY君のように大学紛争の時代に若手として大学の現場に居た人達が、現在でも当時の全共闘の連中を許していない
 ことを、以前に書いた(「出逢いの問題(4)社会環境の運(続)」 )。

1940年代に日本が米国と戦った事を知らない人は多いという(歴史認識(2))が、 その30年後の1970年頃に大学紛争という出来事があったことならば、可也多くの人が憶えているだろう。
そして、更にその30年後の現在、多くの人々は、養老氏らの執念深さに辟易して、「もう、いいじゃないか」と思うだろう。
ここに今回の問題(「耐震強度偽装問題」)の本質が有る
 と私は思うのである。

普通の日本人の、養老氏やY君に対する受け止め方は、南京大虐殺事件の話を中国が持出すとうんざりして、またか、と思うのと同根である。
良かれ悪しかれ、淡白で「執念深さの無い国民性」がその根源である。

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

★湯川博士が言っていた様に、科学者の最も重要な資質は「執念深さ」であり、 国民性としてそれの欠如した日本は自然科学を生み出さなかった。
現代文明の基幹である科学技術を産んだのは、 アラブであり、 欧米キリスト教国であった。

その国民性の故に、
「戦争を起こした人間も、死ねば皆、仏様」、にする首相、
「たった10人かそこらの人間が連れ去られたからと言って、国家間の関係を損なって良いか」、と考える高級官僚、
の支配する日本は、 中国から見ても、米国から見ても、異質であろう。

ただ、米国は友好関係を損ない度くないから、靖国問題には今までは、発言を控えて堪えてきた。
が、2005年の暮れも押し迫った時期になって、これ以上アジアがごた付くのを、我慢しきれず、日本に反省を求めた。
もう大抵にして貰わないと、米国もアジア諸国との関係で困るので、遂に発言したのだろう。

拉致被害者家族に対する同情が、日本政府よりも米国政府の方が強いというが、拉致問題に対する日米政府の態度の差も、彼等はそれが正当だと思うことに由来する。
これもまた、同根である。

多神教の民族では「他人の痛みは60日でも堪える」し、一神教の民族では「目には目を」、となる必然性が有るのだろうか。
或いはピアニストが言うように、日本は世界の国々の中には、かなり特殊な国なのだろうか( 国連常任理事国を目指す前に)。

・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・ ・  ・  ・  ・ 


★執念深さの話から、本題に戻る。

Y君は個人的な気持ちとして、日本に於ける大学紛争発端の東大医学部の問題が生じた時には、学生に同調的であった。  しかし、それは次第に変わって行った。
紛争が全国的規模に展開していく過程で運動が変質し、 Y君の大学に波及した頃には、運動は全く政治的なものになっていた。

「大学紛争」は、自分の大学に現存する問題を改革するのではなくて、毛沢東思想を日本に広める事が目的の政治運動化していたので、Y君の大学ではまともな学生は殆ど運動に反対していた。
運動参加者は、平素の大学生活では全く出番の無い、劣等生ばかりであった(★プライオリテイの尊重)。
丁度学年末試験の時期であり、卒業年次の学生の多くは、そこで単位を取得するかどうかで、卒業出来るか一年留年するかが決まるため、 政治運動よりも自分の卒業資格を確保しようとしたのは、自然の成行きであった。

全共闘の学生の中には、大学紛争の名目で他学科の期末試験を妨害し粉砕したが、 自分は期末試験を受けていて、 「自分の出来る範囲で、社会を正す運動をしている」、と言った者も多く居た。

★所が新聞は、紛争発端の東大医学部の問題の次元でしか、記事を書かなかった。
 毎日を自分の大学で紛争に対処する以外の仕事は、何一つ出来ない日々を過ごす内に、 Y君も気持ちが変わって行った。(「続続・定年制」)


************************************************************

現場の状況は違うと伝え、正確な報道をして貰うべく、 彼は一読者として新聞社に電話をした。
電話を受けた新聞社の人間は、彼の話を中途までしか聞かずに、「貴様,右翼か」と大声で怒鳴って、ガチャリと電話を切った。

Y君は祖父の代から続けてきた朝日新聞の購読を止めた( 広島原爆60周年(3) )。


翌年になって、浅間山荘事件が起ると、新聞の論調は一変した。
先月まで「純真な学生」と記述してきた同一の若者を、「暴力学生」と表現するようになった。
マスコミ人種に取って、この種の変化は極めて容易である。
変身は一日で出来る。 マスコミとはそうしたものである。
( 「トラと評論家」


火事は大きいほど、見ていて面白いものである。
留年の決まっている、出来の悪い学生が良い口実を得て騒いでいる、と書くよりも、 純真な学生が正義のために、棒切れを持って教授をぶん殴っている、の方が記事としては面白い。
マスコミとは、「真実を」伝えるものではなくて、「面白く」伝えるものなのである。
 
 こういう体験をして来ているから、キャズ氏は[★ 「耐震強度偽装問題」]、のような事を書くのだ。


バブルの時代に、「経営者は会社に利益を齎すのが仕事だから、今の時代には自動車メーカーの社長でも、自動車を作るよりも北海道の土地を購入して、会社の利益を上げる事を考えるのが、経営者の責任である」
 と、テレビでしたり顔で主張していた評論家Tは、 バブルが弾けると金融機関批判に転じた。


現在でもテレビで喋っているが、 昔その様な主張をして申訳有りませんでした、と一言でも謝ったのを、聞いた事が無い。
こんな奴を評論家と評価して、置いておくのが、日本のマスコミである([ 福知山線・列車事故の原因A ]) 。

評論家Tに煽られて、自動車生産を止めて、北海道に金を注ぎ込んだ、自動車メーカーはなかった。
銀行・証券などの金融関係は、不見識にもバブルで大火傷をした。 けれど、政府がその火傷の手当てをしたから、回復した。

************************************************************

しかし、養老孟司氏やY君のように、大学紛争の時代に若手として、 たった一度の人生の最も働き盛りを無駄にした人は、 その時間を取り返しは出来ないのである。
人生の預金通帳に50年と言う時間が入っていて、何時でも使えるのではなくて、 3歳の時は3歳、20歳の時には20歳でなければ、出来ないことがある。
取り返しの付かないその時期を、政府も、マスコミも償う事は出来ない。
という以前に、 償わねばならない、との気持ちも無い。
養老孟司氏やY君には私としても、 無言館に作品を残した若者よりは未だしも、幸せだと思いなさい、 と言う以外に慰めの言葉も無い。

マスコミが誠実に報道しなかったから、 冒頭に書いたように、世間一般の日本人は、大学紛争の実態を、知らずに過ぎてしまった。
その為に、その時期に大学の現場に居た養老氏たちの話を、「またか」、と感じるのだ。

南京虐殺事件の話を、中国が持ち出すとうんざりして、またか、と思う現在の日本人と同様である。
「歴史認識(2)」、  ★ 「歴史認識(1)」、 にピアニストが書いているように、 人間というものは、 というよりも日本人というものはそうしたものである。

民族の歴史を学ぶという意味で、 イスラエルの若者達が、一度はマサダの砦に登るのを義務付けられているのと同様に、 日本の若者も成人する前に一度は無言館に訪れる事、を義務付けると良いと思う。

************************************************************

参考:
★[B-24] [2005/12/29]:性悪説論者の弁(1)
★[B-26]: 性悪説論者の弁(3)
★[B-51]:性悪説論者の弁(4)

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(6件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
耐震強度偽装問題(続)
前の記事「★[耐震強度偽装問題」に書き、 私が主張したことの練習問題の様な出来事が、新聞に報じられた。 ...続きを見る
変人キャズ
2006/01/11 06:27
紛争学生と、テロリストの正体
★キャズ君の記事{仲間の出合った人達:(3) ホロニャック:[C-126]}の最後の部分、 [往年の名画、「会議は踊る」で、ロシア皇帝と恋に堕ちた少女が、「唯一度の」、を謳う場面の話]、 を読んで、連想する事があった。 それは、以前に書いた記事:{性悪説論者の弁(2):[B-25]、或いは、(出逢いの問題(4)社会環境の運(続):[B-12]}:の話である。 ...続きを見る
佐久間象川
2006/07/21 22:04
感度のある人(2)・悪党
一万円札と間違えて五千円札を出す人間は、『感度の鈍い人』、であるが、 お釣を稼ぐ目的で分かっていて五千円札を出す人間は、『悪党』、である。 ...続きを見る
変人キャズ
2006/07/30 15:39
感度の有無(7):小泉内閣
★多くのブログ記事は、極く最近の諸問題をテーマに扱い、政治、経済、芸能、何でも、2週間もすると話題が移る。  安倍内閣が発足し、施政方針の国会審議も始まった今、前内閣の実績の評価などは関心を持たれなくなる。 我々の仲間の記事は、 30年前の文章をそのまま持ってきて再掲載したりして、全くナウくない。 それは、我々が老人であるが故ではない。 ...続きを見る
変人キャズ
2006/10/08 07:22
性悪説論者の弁(1)
性善説と性悪説の衝突の歴史は長い。 此処で、何故、この様な話題を展開し始めたかというと、キャズ君の記事「★耐震強度偽装問題」に、私が不満だからである。 長くなるから、本論は、次回に陳べることにして、今回はその前提となる話をする。 ...続きを見る
佐久間象川
2007/10/23 01:50
性悪論者の弁(6)
毎日新聞に2008/3/21から3/30までの連載で、「正義のかたち」、という題の、裁判官の告白を紹介しながら、裁判に於ける量刑の公正さ、妥当さを考える記事があった。  “裁判員制度”の発足を一年後にして、“人を裁く”意味を考える、という趣旨の欄である。 ...続きを見る
佐久間象川
2008/04/01 18:08

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
R会という会があった。各業種から選ばれ、会長が承認する人で構成されていた。一業種からは2名までというのが原則だった。月に一度の定例会があって、会長が委嘱する講師を呼んで話を聞き、其の後それを元に討論すると言う仕組みだった。
世の中がバブルの中にあって、「ブームが来る」と言う本が売れていた時代のこと。或る月の講師は、H信用金庫のK理事長だった。「企業経営と経営者の役割」といったテーマだったと思う。話が終って討論に入った時にある業種の一人が質問した。「経理部門の責任者は財テックが出来ないようでは、無能じゃないか」と言うのを受けてK理事長は答えて言った。「私はそうは思わない。経営者は本業に精力を集中すべきで財テックなどは邪道です」。
講師が去ってから、会員相互の意見の交換が何時も行われるが、当の質問者はK理事長の回答に大いに不満だった。しかし結果はご存知の通り。
最近の経営者に、夢や理念欠乏症が、目立っているのが大いに気になる。これは経営者に限らない。
Alps
2006/01/07 22:14
他人の試験を妨害し
自分だけが試験を
受ける...
社会がどうこう言う資格は
ありません。
そういうのを助長する
マスコミはいりません。
イプサム
2006/06/22 22:48

コメントする help

ニックネーム
本 文